日阪製作所は、現在及び将来予測される社会の状況を鑑み、当社が果たすべき社会的責任などを踏まえ、持続可能な目標となる社会の姿を想定するとともに、当社将来像(あるべき姿)を日阪100周年(2042)ビジョン・ロードマップとして策定しております。
その中において、環境問題につきましては、人口増加や新興国の経済成⻑に伴うCO2排出量の増加や水質汚染等の問題が増々悪化することが予測され、環境に関連する規制等がますます強化される可能性が高いと想定しております。一方で、直面する環境問題への対応が新たな成⻑の機会になりうることも認識しており、そのため、持続可能な社会に向けて経営課題として自主的・積極的に環境問題に取り組むことが必要であると考えております。また気候変動関連に係る情報開示は今後のステークホルダーの皆様との対話の重要なテーマになると考えております。
以下に、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース、Task Force on Climate-related Financial Disclosures)提言に沿って気候変動に関連する重要情報を開示します。
当社は気候変動関連事項(CO2排出量削減推進)を含むCSRSDGsビジョンを掲げ、中期計画及び年度計画において関連性を意識した計画策定を行うとともに、適時、経営が計画の総括や進捗確認を行うことによるモニタリング環境を整備しております。
また、当社は代表取締役社⻑を委員⻑とした「サステナビリティ委員会」を2022年4月1日付で設置するとともに、関係部門との連携のもと、気候変動を含む持続可能性に関する様々な重要事項について経営陣が議論する体制を整備しております。
「サステナビリティ委員会」は年2回以上開催され、取締役会に活動結果を報告することで、取締役会が気候変動を含む持続可能性に関する様々な重要事項の監督を適切に図られる体制を構築しております。
目的 | 検討事項 | |
---|---|---|
第3回 (2023年10月) |
関係部門における上期活動状況の確認 | 初回開示状況の確認Scope3算定に向けた対応 |
第4回 (2024年4月) |
関係部門における下期活動状況の確認及び年度計画の総括 | Scope3算定状況の確認 |
役割 | |
---|---|
取締役会 | サステナビリティ推進に関する最重要事項の決定・指示 |
サステナビリティ委員会 | サステナビリティ推進の進捗状況の確認、指示及び結果の評価・検証 |
リスク管理委員会 | 気候変動を含む内部環境・外部環境に対する 複数の影響度を勘案したリスク評価(リスクアセスメント)の実施 |
全社BCP対策会議 | 事業に影響を及ぼす災害等に対する対応設定と 事業活動を「中断/停止させない」あるいは「早期に復旧させる」ための計画推進 |
TCFDプロジェクト | 気候変動対応に取り組む目的・方針の明確化と関連情報の整理と開示 |
その他関係部門 | テナビリティを意識した活動推進 |
当社は「熱交換器」「プロセスエンジニアリング」「バルブ」の大きく3つの事業で構成されており、それぞれの事業でステークホルダーが異なり、気候変動関連のリスク・機会が異なることが想定されたことから、事業別にリスク・機会の抽出及び特定を実施しています。
事業別・ステークホルダー別のリスク・機会の抽出に当たっては、
政策規制 | HG排出に関する規制強化 |
市場 | 低炭素製品の需要変化 |
技術 | エネルギー需給の変化/次世代技術の進展・普及 |
評判 | ステークホルダーの評判変化 |
慢性 | 地球温暖化による環境変化 |
急性 | 自然災害の激甚化 |
との関連を設定し検討しました。
当社では、気候変動関連事項の動向に対するシナリオ分析を実施しています。
事業別のリスク・機会の抽出結果に基づいて特定した気候変動によるリスク・機会は下表の通りです。
移行リスクに関しては、3事業共通してサプライヤでの調達品製造から顧客での製品使用までのライフサイクルにおいて、多くのエネルギーを使用することから、「GHG排出に関する規制強化」「エネルギー需給の変化」「低炭素製品の需要変化」に基づくリスクと機会が主と想定されます。
また、物理的リスクに対しては、気候変動関連災害による製造拠点への影響を主なリスク・機会と捉えました。
※中長期で当社事業に影響が大きいと想定され、今回財務インパクト試算の対象としたリスク・機会について、黄色ハイライトしています。
当社では、各種シナリオで想定した気候変動関連リスク・機会が発現した際に想定される財務インパクトを下記のように試算しております。
試算にあたり、当社では1.5℃シナリオの実現に向けて、当該シナリオにおけるリスク・機会の財務インパクト化に注力しております。
試算の結果、事業における脱炭素の推進及び環境配慮型製品を押し進めていくことが、気候変動による財務インパクトを改善することができると認識し、今後活動を加速化させてまいります。
※下表のパラメータ及び内部情報を用いて財務インパクトを算定しております。
主なパラメータ | 活動量 | 原単位 |
---|---|---|
炭素税 | Scope1,2排出量 | 100$/t-CO2(IEA2021) |
エネルギー高騰 | 電力使用量 | 1,620円/MWh(IEA2019) |
※今回調査しました予測情報をもとに、対応策のひとつとして挙げたものです。
さらに予測情報の精度を高め、環境配慮型製品のさらなる開発促進など、各種対応を検討してまいります。
なお、4.0℃シナリオ時に想定される「自然災害の激甚化」「地球温暖化による環境変化」リスクに対しても、「サプライチェーンを含んだBCPの推進」「環境変化に対応した製品開発促進」などを軸に財務インパクトの改善に向けた対応を推進してまいります。
当社では、移行リスクとして「政策規制:GHG排出に関する規制強化」「市場:低炭素製品の需要変化」「技術:エネルギー需給の変化/次世代技術の進展・普及」「評判:ステークホルダーの評判変化」、物理リスクとして「慢性:地球温暖化による環境変化」「急性:自然災害の激甚化」の観点に対し、「自社事業及びステークホルダーへの影響度」と「リスク・機会の発生可能性」の2つの視点で評価し、重要なリスク・機会を選定しています。
当社では、評価・特定した気候変動関連のリスク・機会に対して、下表の取組みを推進しています。
当社は、サステナビリティ委員会の下にリスク管理委員会を設置し、リスク管理の実践を通じた事業の持続可能な発展を確保するとともに社会的責任の達成に寄与することを方針として掲げております。
リスク管理委員会では、気候変動関連に係るリスクを含む事業運営上の重要なリスクを抽出し、毎年多角的な影響度によって評価するとともに、対応するリスク低減状況について定期的にモニタリングしております。
当社では、気候変動対応に向けて、GHG排出量を主な指標とし、SBTが規定する1.5℃水準の実現を目標とし、2030年までに温室効果ガス(GHG)排出量をScope1,2排出量については、2022年度比で29%低減(年率4.2%低減)することを目指します。
Scope1,2排出量と2030年に向けた削減目標
※削減目標設定のための2030年度BAU排出量は、2022年度の売上高当たりCO2排出量と2030年度の期待売上高に基づき設定しています。
※2023年度の上昇
主な理由:生駒事業所の新規開設に伴う上昇、CO2排出量係数変更の影響、など
但し、2030年度の目標は修正しておりません。新たに設定したロードマップに従い、目標達成に向けて活動を進めてまいります。
当社では、気候変動対応に向けて、現時点及び将来の状況を分かりやすくするため、以前目標に掲げていた2013年時点をゼロとし、2050年までに脱炭素化を目指す形としてグラフ化しました。
また、2023年度のScope3排出量を算定いたしました。(日阪製作所単体での算定)
当社のScope3排出量の大部分は「カテゴリ11:製品の使用」「カテゴリ1:購入した製品・サービス」が占める結果となりました。
カテゴリ11について、当社製品ではお客様での使用時に蒸気・電気を必要としますが、
そのうち蒸気が電力の4.5倍のCO2排出量を占めます。したがって、蒸気の使用量を抑制したモデルを製造・販売することで、
カテゴリ11の低減を図ってまいります。
カテゴリ1については、当社製品の多くがステンレス製であり、製品重量が大きいことが比率を押し上げています。
したがって、部品点数など部品構成の再検討を進めることで低減を図っていく予定です。
自家消費型太陽光発電設備の導入