伝熱促進について(自然対流、蒸発熱伝達、凝縮熱伝達)
熱伝達には“対流熱伝達”“沸騰熱伝達”“凝縮熱伝達”等があり、どのような形態で熱が伝わるかによって“境膜伝熱係数”の値が変わり、“熱伝達率”の値は大きく異なります。
“対流熱伝達”について、流れを強制的に生じさせることにより自然対流に比べて伝熱面に近い場所の温度変化が活発になります。すなわち、強制対流を起こすことにより流体と伝熱面間の熱の伝わり易さである境膜伝熱係数hの値は大きくなります。
“沸騰熱伝達”とは、沸騰する液体は熱伝達率が大きいという特長を利用した熱伝達です。具体的には、大気圧下で
自然対流中の水の熱伝達率・・・(2.3~5.8)×102 [W/m2・℃]
強制対流中の水の熱伝達率・・・(1.2~5.8)×103 [W/m2・℃]
沸騰中の水の熱伝達率・・・・・(1.2~2.3)×104 [W/m2・℃]
となります。
下の図は初期沸騰の始まりから完全沸騰(ドライアウト)に至るまでの熱伝達率の変化を表しています。ポスト・ドライアウト域ではクオリティが増大し液膜が消失することで壁面が乾き、熱伝達率は急減してしまうため、熱交換器内部をより高い熱伝達率が得られる核沸騰域と強制対流蒸発域で満たすことにより熱交換器全体を無駄なく熱交換に使用できます。
“凝縮熱伝達”とは、蒸気が冷やされ液体に変化する過程で放出する潜熱を利用した熱伝達です。壁面に凝縮して生じた液相の形状が薄い膜状であるときを膜状凝縮、滴状であるときを滴状凝縮といいます。同じ温度差でも滴状凝縮の熱伝達率は膜状凝縮よりも15~20倍大きいですが、長期にわたって工業的な条件下で液膜凝縮を維持する方法は存在しないため、熱交換器の凝縮計算においては膜状凝縮を想定した計算を行います。
壁面が凝縮液で覆われていると、壁面温度が上昇し凝縮前の蒸気が冷たい壁面に接触しにくく凝縮を妨げてしいます。このため、伝熱性能を維持するためには熱交換器から凝縮液を可能な限り排出することが望ましく、装置においては熱交換器を高い位置に設置し凝縮液の出口配管を下げることで凝縮液の排出性を向上させています。